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広島高等裁判所 昭和33年(オ)223号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「一、原判決を取消す。二、被控訴人城軍蔵は控訴人に対し別紙目録記載の四筆の土地に対する仮換地である広島市千田町四百二十ブロツク十一ロツト宅地百八十九坪五勺のうち別紙図面(イ)(ロ)(ホ)(ヘ)(イ)により囲繞される土地上にある別紙目録第二記載の建物を収去して右土地を明渡せよ。三、被控訴人大下柾行は控訴人に対し右宅地のうち別紙図面の(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ロ)によつて囲繞される土地上にある別紙目録第三記載の建物を収去して右土地を明渡せよ。右第二、三項が認容せられない場合予備的に四、被控訴人城軍蔵が控訴人に対し使用収益し得る土地の範囲は、右宅地のうち別紙図面の(イ)(リ)(ヲ)(ヘ)(イ)を順次結びこれによつて囲繞された部分であることを確認する。五、被控訴人大下柾行が控訴人に対し使用収益し得る土地の範囲は、右宅地のうち別紙図面の(リ)(ヌ)(ル)(ヲ)(リ)を順次結び、これによつて囲繞された部分であることを確認する。六、被控訴人城軍蔵は控訴人に対し別紙目録第二記載の建物のうち別紙図面の(リ)(ロ)(ホ)(ヲ)(リ)の各点を順次結び、これによつて囲繞された地上にある部分を収去して、その敷地たる右土地部分を明渡し、且つ昭和三十一年十一月十一日から右明渡済まで一ケ月金六百円の割合による金員の支払いをせよ。七、被控訴人大下柾行は控訴人に対し別紙目録第三記載の建物のうち、右図面の(ヌ)(ハ)(ニ)(ル)(ヌ)を順次結んで、これによつて囲繞された土地にある部分を収去して、その敷地たる右土地部分を明渡し、且つ昭和三十一年十一月十一日から右明渡済まで一ケ月金六百円の割合による金員の支払をせよ。若しくは、八、被控訴人城軍蔵が控訴人に対し使用収益し得る土地の範囲は右宅地のうち、別紙図面(イ)(ワ)(カ)(ヘ)(イ)を順次結んで、これによつて囲繞された部分であることを確認する。九、被控訴人大下柾行が控訴人に対し使用収益し得る土地の範囲は、右宅地のうち別紙図面(ヨ)(ハ)(ニ)(タ)(ヨ)を順次結んでそれによつて囲繞された部分であることを確認する。十、被控訴人城軍蔵は控訴人に対し別紙目録第二記載の建物のうち別紙図面(ワ)(ロ)(ホ)(カ)(ワ)を順次結んでこれにより囲繞された土地上にある部分を収去し、その敷地たる右土地を明渡し、且つ昭和三十一年十一月十一日から右明渡済まで一ケ月金五百三十九円六十銭の割合による金員の支払をせよ。十一、被控訴人大下柾行は控訴人に対し別紙目録第三記載の建物のうち別紙図面(ロ)(ヨ)(タ)(ホ)(ロ)を順次結んでこれにより囲繞された土地上にある部分を収去し、その敷地たる右土地を明渡し、且つ昭和三十一年十一月十一日から右明渡済まで一ケ月金六百一円二十銭の割合による金員の支払をせよ。の請求を択一的に認容し、且つ、十二、訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とする。」との判決並に給付請求部分に対する仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の関係は、控訴代理人において、被控訴人等のように従前の土地の一部につき賃借権を有するに過ぎないような場合には仮換地について先ず施行者の指定がない限り権利者が当然に仮換地について権利を有するものでない(最高裁昭和三十三年七月三日判決参照)から請求の趣旨を拡張し、控訴の趣旨第二、三項のように被控訴人等に対し全部の土地の明渡を求め、この見解が認容されない場合は控訴の趣旨第四乃至第七項の請求若しくは控訴人主張の区画整理方法によつて算出された原審鑑定の結果を援用して同趣旨第八乃至第十一項記載の請求を認容せられたく本件控訴に及んだと述べた外は、いずれも原判決事実摘示と同一なのでここにこれを引用する。

理由

当裁判所も亦原判決と同様控訴人の請求を失当であると判断したがその理由は左記に附加する外は原判決理由中の説示と同一なのでここにこれを引用する。

従前の宅地の一部について賃借権を有するに過ぎないような場合に仮換地について先ず施行者の指定がない限り権利者が当然に仮換地につき権利を有しないことは所論の通りであるが、その趣旨とするところは整理施行者によつて賃借地は仮換地のどの部分かを特定して貰わない限りこれを現実に使用収益することができないことを意味するに過ぎないもので、やはり旧地の賃借権が当然消滅したものと考えるべきではない。即ち旧地の賃借権者は仮換地上に現実に使用収益しうべき権利は発生していないが、土地所有者に対し従前の賃借地に相応する地域を提供すべきことを求め、或は施行者にその部分の指定を求める権利があることは明らかである。従つて土地所有地である控訴人としては賃借権者である被控訴人等に対し仮換地につき使用収益をなしうる位置、範囲につき協議に応ずるか協議が成立しなければ整理施行者に指定を申請すべきであつて、被控訴人等は右協議又は指定前に於ても仮換地上に潜在的な使用収益権を有するものというべく、これを以て無権原の場合と同一視すべきではない。特に本件は仮換地が旧地より減歩せられ旧地に借地権に基づき建築した建物がそのまま現存して新地(仮換地)内の一部に存することとなつた場合であつて、普通なれば新敷地は当然減歩される運命にあるから観念的には借地権の範囲より余分に占拠するに至つたことになるがその余分に占拠したと見られる範囲も、新地に対する借地権の範囲が未協定又は未指定の状態にある以上確定できない筋合である。従つて協議をするか、或は指定を受けることをしないで、現実に使用収益権のないことを前提としただけで不法占拠を理由にその全体は勿論一部についても建物の収去、土地明渡並に明渡済までの損害金の支払を求めることは許されないものと解するのが相当である。

しからば爾余の争点につき判断するまでもなく控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきである。右と同趣旨にでた原判決はもとより相当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のように判決する。

(目録第一、二、三は一審判決と同じにつき省略する。)

〈省略〉

備考

一、広島市千田町一丁目四百二十ブロツク十一ロツトの千田町電車通りに面する東南角を(イ)点とし、

二、(イ)点より電車道に沿い二、五間北上した点を(ロ)点とし、

三、(ロ)点より更に右電車道に沿い約二、五間北上した点を(ハ)点とし、

四、(ハ)点より右電車道に直交して西方に約十二間歩んだ点を(ニ)点とし、

五、(ニ)点より南方に約二、五間南下した点を(ホ)点とし、

六、(ホ)点より更に南方に約二、五間南下した点を(ヘ)点とし

七、(ホ)(ヘ)を結ぶ線が前記四百二十ブロツクの南方に東西に走る道路と交叉する地点を(ト)点とし、

八、(ト)点より東方に約十間進んで右道路に接する東南端を(チ)点とし、

九、(イ)点より前記電車道路に沿い各一、五間宛歩んだ地点を順次(リ)(ヌ)点とし、

十、(ヘ)点より(ヘ)(イ)線に沿い各一、五間宛歩んだ地点を順次(ヲ)(ル)点と仮称する。

〈省略〉

(イ)より(ロ)点に向い一、六八四間歩んだ地点を(ワ)点とし、

(ヘ)点より(ホ)点に向い同一距離歩んだ地点を(カ)点とする。

(ハ)点より(ロ)点に向い一、四九八間歩んだ地点を(ヨ)点とし、

(ニ)点より(ホ)点に向い同一距離歩んだ地点を(チ)点とする。

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